院長ヴォイス

新型コロナウイルス感染症ワクチンに対するWHOの見解

3月28日にWHOから新型コロナウイルス感染症予防のためのワクチン接種に関する新しい指針が発表されましたが、一部の報道機関が誤訳し、誤った内容がSNS等で拡散されています。新型コロナワクチンの安全性や有効性に関する考え方は変わっていませんが、国民の多くが免疫を獲得している国や地域では、優先度に応じたワクチン接種に切り替えて構わないというのが骨子です。ただし、重症化リスクの高まる変異株が出現しない前提でのお話です。WHOの原文は誰でもアクセスできるようになっておりますので、原文をお読みになりたい方は、https://www.who.int/news/item/28-03-2023-sage-updates-covid-19-vaccination-guidanceでご確認ください。テレビやインターネットのニュースの中には、誤った情報も混在しています。一次情報を確認するか、信頼できるかかりつけ医などにご相談ください。
 
今回のWHOの指針を要約しますと次の通りです。
 
1. 多くの人が新型コロナウイルスに既に感染しているか、ワクチンを接種しているか、もしくはその両方となっているため、一律でワクチン接種を推奨する段階から、個人の感染リスクや重症化リスク、国や地域の新型コロナウイルス感染症や他の感染症の流行状況、経済状況に応じて国や地域ごとに判断する段階に移行する。
 
2. 高齢者、重症化リスクが高い基礎疾患がある若年者、生後6カ月以上の免疫不全者、妊婦、医療従事者は引き続き、ブースター接種が必要であり、最後の投与から6カ月から12カ月後に追加接種することを推奨する。
 
3. 健康な成人、基礎疾患のある子供には、3回接種を推奨する。ブースターの追加接種は安全だが、公衆衛生上の利益(個人ではなく国や地域全体で見た時の利益)が比較的少ないため、全員一律にブースター接種を繰り返すことは推奨しない。
 
4. 生後6カ月から17歳の健康な子供では、ワクチン接種は安全かつ有効だが、病気の負担が少ないことから、その他の優先すべき事項(麻疹などの必須ワクチンの接種)、経済的な問題などを考慮し、国や地域が接種するかどうかを判断して良い。
 
5. 乳児の感染でも、確率は低いが重症化する例があり、乳児は6カ月以上の子供よりもリスクが高い。妊娠中のワクチン接種は、妊婦自身と胎児を守り、さらに出産後に乳児の入院(重症化)リスクを減らす。妊婦は前回の接種から6カ月以上経過している場合は追加接種を推奨する。
 
6. 使用するワクチンはBA5対応の2価ワクチンを推奨する。

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