院長ヴォイス

帯状疱疹ワクチンについて

 最近、帯状疱疹ワクチンのCMを目にする機会が増えました。帯状疱疹に罹患しても「皮疹(ブツブツ)ができて痛いだけ」と思われがちですが、60歳以上で罹った場合、半数以上の方が強い痛みが長く続く帯状疱疹後神経痛に移行します。帯状疱疹後神経痛は、一般的な鎮痛薬が効きにくく、人によっては何十年も続きます。また、帯状疱疹ウイルスによって神経が破壊されると、麻痺症状が出ることもあり、顔面の麻痺や手足の麻痺が治らないこともあります。帯状疱疹は生活の質を著しく下げますが、ワクチンで予防することができます。欧米では随分前から「帯状疱疹はワクチンで予防する」という考えが普及しています。
 関節リウマチ患者さんは、帯状疱疹になりやすいことが明らかになっています。一般人口の発症率は1.3~4.8/1000人年(=1年間に1000人当たり1.3~4.8人が発症する)ですが、MTXを使用している関節リウマチ患者さんの発症率は14.5/1000人年、生物学的製剤を使用している患者さんを含む発症率は6.8~19.7/1000人年と報告されています。さらにJAK阻害薬では他剤の2倍に発症率が上昇するとする報告もあります。また、関節リウマチの治療では免疫を抑制する薬剤を使いますので、帯状疱疹が重症化しやすく、帯状疱疹後神経痛などの後遺症を残す確率も高くなります。一般の方以上にワクチンの接種をお勧めします。
 以前は生ワクチン(弱毒化したウイルスを接種する)しかありませんでしたので、免疫抑制状態にある関節リウマチ患者さんは帯状疱疹のワクチンを接種できませんでした。しかし、現在は、より安全性と有効性が高いサブユニットワクチンという種類のワクチンが使えます。2回接種する必要があること、任意接種で価格が高いこと(1回2万円超)、副反応(投与部位の痛みや腫れ、発熱、頭痛など)が出ることから、躊躇される方もいますが、50歳以上の方は接種するメリットが大きいと思います。また、自治体によっては帯状疱疹ワクチン費用の助成制度がありますので、利用できる方は、ご活用ください。最近、長期的なデータとして、8年後にも84.1%の発症予防率があったことが報告されました。現時点では8年目の効果までしか明らかになっていませんが、抗体価の推移からは、より長期的な効果が期待されています。2回の接種で10年間効果が続くと考えれば、1日あたり10数円のコストで予防できる病気ということになります。
 現在は「80歳までに3人に1人が罹患する」と言われている帯状疱疹ですが、高齢化社会であること、水疱瘡の子供が激減している(2014年と比較して78.1%減)ことで免疫を強化する機会がなくなっていることから、今後は、より多くの方が罹患すると考えられています。特にリスクが高い関節リウマチ患者さんでは、注意が必要です。新型コロナやインフルエンザのように急いで接種する必要があるワクチンではありませんが、新型コロナの感染状況が落ち着いている時期で、体調の良い時に接種をご検討ください。

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