欧州リウマチ学会は毎回楽しみにしている学会でしたが、この3年間はコロナ禍のため、参加することができませんでした。欧州リウマチ学会は今年75周年を迎えた由緒ある学会です。今年のEULAR2022は、デンマーク(コペンハーゲン)での現地開催とwebのハイブリッド開催でした。そこで、関節リウマチ治療の新たな診療指針が発表されました。今回の改定で変更された点について、お示しします。変更点は4つありました。
1.csDMARDs(従来型抗リウマチ薬)を開始/変更する際のステロイドについて
「臨床的に可能な限り早く漸減すべきである」から「臨床的に可能な限り早く漸減中止すべきである」に変更され、ステロイドの中止が強調されています。
2.予後不良因子があり、csDMARDs(従来型抗リウマチ薬)で十分な治療効果が得られない場合の治療薬の選択について
「生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬を加えるべきである」から「生物学的製剤を加えるべきである。JAK阻害薬は考慮しても良いが、関連のあるリスク因子を考慮にいれなければならない」に変更されました。関連あるリスク因子としては、65歳以上、現在あるいは過去の喫煙歴、その他の心血管リスク、悪性腫瘍のリスク、血栓塞栓症のリスクが挙げられています。
3.生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬で効果が得られなかった場合の治療について
「他の生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬を考慮すべきである。もし1つのTNF阻害薬で効果がなかった場合、患者は他の作用機序の製剤、あるいは2つ目のTNF阻害薬で治療できる。」から「他の生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬を考慮すべきである。もし1つのTNF阻害薬やIL-6阻害薬で効果がなかった場合、患者は他の作用機序の製剤、あるいは2つ目のTNF阻害薬/IL-6阻害薬で治療できる。」に変更されました。同じ作用機序の生物学的製剤が複数ある際、同じ作用機序の薬剤を使用する選択肢の中に、IL-6阻害薬からIL-6阻害薬への変更が加えられています。
4.DMARDs(抗リウマチ薬)の減量について
「患者が継続的に寛解にあり、ステロイドを漸減した後に、特に治療がcsDMARDsとコンビネーション治療である場合、生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬の漸減を考慮可能である。csDMARDsの減量も考慮できる。」から「ステロイド中止後、患者が継続的に寛解にある場合、DMARDs(生物学的/標的型/従来型)の減量を考慮しても良い。」に変更されています。ここでもステロイドの中止が強調されています。
今回の改定でも、治療の大きな原則やTreet to Target(設定した目標に向けて厳密に病勢をコントロールする方針)の推奨などは変更されていません。ステロイドに関する推奨がより明言され、新たなデータを組み込んだ内容に変化した点が今回の改定の特徴です。当院では、以前からステロイドを使用せずにコントロールすることを目標としておりましたので、大きな変化はありませんが、診療指針にステロイドの中止が盛り込まれたことは大変良かったと思います。