院長ヴォイス

リウマチ因子と抗核抗体

 新型コロナの検査で偽陽性(病気ではないのに検査結果が陽性になること)や偽陰性(本当は病気なのに検査結果が陰性になること)という言葉を耳にするようになりました。馴染みがないと中々理解が難しいかとは思いますが、どのような病気であれ、1つの検査だけで正確に診断することはできません。症状や経過から類推し、必要な検査を組み合わせることで、正確な診断になります。
 関節リウマチや各種膠原病の検査では、リウマチ因子と抗核抗体が特に問題になります。以前もお話しましたが、リウマチ因子が陽性だからと言って関節リウマチとは限りません。健常者でも陽性になることがあります。逆に、リウマチ因子が陰性だったからと言って、関節リウマチの可能性を完全に否定できるものではありません。関節リウマチの患者さんであっても、約20%の方はリウマチ因子が陰性です。リウマチ因子が陽性か陰性かだけで診断するのではなく、症状の経過(持続性があるかどうか)、特徴的な症状(関節痛や朝のこわばりなど)や他の血液検査結果(抗CCP抗体、CRP、赤沈など)を加味して診断しなければなりません。他の病気、例えば慢性肝炎の方ではリウマチ因子の陽性率は36,7%と高く肝硬変の方では53,8%が陽性となる事が日本リウマチ財団の報告でされています。
 抗核抗体に関しても同様で、健常者でも10%が陽性になりますので、抗核抗体が陽性だったとしても、必ずしもSLEなどの膠原病であるとは限りません。逆に、陰性であったとしても、膠原病を否定できるわけではありません。抗核抗体にも細かく種類があり、疾患によって特徴的な項目が異なります。例えば、シェーグレン症候群では抗核抗体が陰性であっても、SS-A抗体が陽性というようなことがよくあります。確定診断のためには、症状や経過を確認し、より専門的な検査を追加する必要があります。
 専門外の先生の中には、リウマチ因子や抗核抗体が陽性か陰性かということしか見ていない場合がありますが、それでは不十分です。その値が高ければ無症状であっても注意深く経過観察が必要ですし、値が低ければあまり心配する必要はありません。他に追加の検査を行うかどうかの判断や、経過を注意深く見る必要があるかどうかの判断は専門医でないと難しいと思います。ぜひ、専門医にご相談ください。

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