前回は関節リウマチの診断に用いる検査についてご紹介しました。今回は、関節リウマチと診断され、治療中に必要な検査についてお話します。関節リウマチ治療中は定期的に血液検査や尿検査、レントゲン検査などが必要です。いつも受けている検査も意義が分かって受けるとまた違うと思いますので、なぜ必要なのかについてお示しします。
患者さんにとっては治療効果が得られているかが、一番気になるところかと思いますが、リウマチ専門医としては、合併症や治療による副作用が出ていないかどうかを確認したいというところが大きいです。血液検査では、白血球や赤血球、血小板などの数が増えすぎたり、減りすぎたりしていないか、腎機能や肝機能が悪くなっていないかということを確認しています。
感染症と戦うために必要な白血球が減少すると、通常は何ともないような細菌でも重度の肺炎を起したりします。関節リウマチの治療薬の影響で減少している場合は、薬剤の減量や中止が必要になります。アクテムラやケブザラなどのIL-6阻害薬では、白血球数が減ることがあります。逆にステロイドは白血球数を増やします。関節リウマチの患者さんでは、貧血も多くみられます。関節リウマチの活動性が高い場合、腎機能障害が強い場合、鎮痛薬やステロイドの長期連用による出血性潰瘍を起こしている場合などに貧血が起こります。血小板は止血に働いています。関節リウマチの治療薬によって血小板が減少することがあります。血小板が不足すると、出血傾向(軽微な刺激で出血する状態)になります。薬剤性であると判断すれば、原因となった薬剤を減量中止して対応します。一方、関節リウマチの患者さんでは活動性が高く、炎症が強い時期には血小板数が高くなります。治療によって活動性が下がれば血小板数は正常化します。
腎機能の検査は非常に重要です。腎機能は加齢に伴い皆さん低下していくものですが、下がりすぎると、身体の中から老廃物を排出する力が足りなくなります。しかし、相当に進行するまで自覚症状は出ませんので、定期的に検査で確認する必要があります。推算糸球体濾過量(eGFR)の値によっては、使える薬も量も少なくなります。早期に発見し、対応することが必要です。
肝機能も関節リウマチの治療中には注意深く見ておかなければなりません。関節リウマチの治療薬によって肝臓の機能が障害されることがあるからです。検査項目としては、AST、ALT、γGTP、LDH、ALPなどを確認しています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるくらいに異常があっても自覚症状が出ません。そのため、血液検査で客観的に見ておく必要があります。メトトレキサートによる肝機能障害は比較的多い副作用です。葉酸の併用である程度コントロールができますので、軽度であればメトトレキサートの減量や葉酸の増量などで対応可能なことも多いです。肝機能障害は関節リウマチ以外の問題で生じることも多いですので、長く続く場合は、消化器内科での専門的な検査を検討します。
使用している薬剤によっては、尿検査も非常に重要です。リマチルなどを使用している際に、尿蛋白が出ることがあります。この尿蛋白はリマチルを休薬することにより改善しますが放置するとネフローゼ症候群に至ることもあります。また、ステロイドを高用量で使用している場合には、薬剤性の糖尿病を生じる場合があります。糖尿病では、尿糖が陽性になります。
その他にも、関節リウマチ患者さんで起こりやすい病気の確認もしています。間質性肺炎のマーカーとしてKL-6、リンパ腫のマーカーとして可溶性インターロイキン2レセプター(sIL-2R)など、疑わしい場合には通常の検査に加えて実施する場合があります。
関節リウマチの治療を安全に行うためには、検査は非常に重要です。ご自分の受けた検査について分からないことや気になることがございましたら、外来で個別にお尋ねください。