昨日、長崎大学の森内教授が「少なくともこのワクチンを打って、大事になる確率は、恵方巻をモフモフと食べて、喉が詰まって窒息死する確率よりはずっと低い」とテレビで仰っていました。医療従事者以外にも分かりやすい説明で、良い例えだと思います。一方、残念なことに、国内の多くの報道がワクチン接種をためらうような内容になっています。今回は、ワクチン接種によって、どのくらいのメリットが得られるかについてお話したいと思います。
皆さんが一番、馴染みのあるワクチンはインフルエンザのワクチンではないでしょうか。インフルエンザに関しては、「ワクチンを打っても、罹るときは罹る」という印象をお持ちかと思います。インフルエンザワクチンの有効率(感染予防率)は約50%です。残念ながら、感染を予防するというよりは、感染した時に重症化しないように接種するワクチンです。一方、新型コロナウイルスワクチンの有効率は、ファイザーのワクチンが95%、モデルナのワクチンが94.5%、アストラゼネカのワクチンが90.0%です。有効率が90%を超えているということは、感染する可能性が1/10に抑えられるということです。この有効率は、画期的な数値です。
世界で最も新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、現時点で全国民の35%がワクチンを接種し、60歳以上の180万人は2回目の接種まで完了しています。イスラエルでは、2回の接種を完了した人の新型コロナウイルス感染率は0.014%と圧倒的に少なくなっており、重症者は出ていません。臨床治験で示されたデータ通りの非常に良好な結果が一般市民への接種で確認できています。感染を予防するだけではなく、重症化を防ぐ効果があることも非常に大きなメリットです。新型コロナウイルスが重症化するリスクは、年齢や基礎疾患によって大きく異なります。30歳代のリスクを基準(=1)とすると、20歳代は0.3倍、40歳代は4倍、50歳代は10倍、60歳代は25倍、70歳代は47倍、80歳代は71倍になります。60歳以上の感染者が1名も重症化していないというイスラエルの報告は非常に嬉しいニュースです。
最近、最もワクチン接種をどうするかの判断が難しい妊婦に対する提言も出てきました。米国CDCは「接種の対象から外すべきではない」、WHOは「接種した方が高リスクであるという明確な根拠はなく、コロナウイルスに対する感染リスクが高い場合は医師と相談の上、接種可能」、日本産婦人科学会は「ワクチン接種対象から除外することはしないが、器官形成期(妊娠12週まで)は避ける」という方針です。先週、「新型コロナウイルスに対する抗体を持つ母親から生まれた新生児臍帯血の87%に新型コロナウイルスに対する抗体があった」という論文が発表されました。今後、妊婦においてもワクチン接種のメリットが大きいと判断される流れになりそうです。
ワクチン接種を強制されることがあってはいけませんが、国や報道機関には、国民が正しい情報を得て、接種について冷静に判断できる環境を整えて頂きたいと思います。
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お知らせ2021.02.04