あまり知られていませんが、間質性肺炎という病気があります。肺の細胞が固くなり、酸素と二酸化炭素の交換が上手くできなくなる病気です。ここ数年は、新型コロナウイルス感染症の合併症や後遺症としてニュースで耳にしたことがある方もいるかもしれません。聞き慣れない病名だと思いますが、実は間質性肺炎は日本人の死因の第11位で、重要な病気の1つです。また、関節リウマチをはじめとする膠原病の患者さんでは特に注意が必要な病気です。膠原病に合併しやすく、生命に関わる状況になり得るからです。
間質性肺炎は進行すると治療が非常に難しくなるため、早期発見早期治療が重要です。一方で初期には咳や息苦しさ、胸痛などの症状がなかったり、呼吸機能検査でも異常が出なかったりしますので、診断が遅れやすい疾患でもあります。そこで、リスクが高い膠原病の患者さんでは定期的にレントゲン検査を行い、必要に応じて血清KL-6値の測定やCT検査を行います。膠原病患者さんの間質性肺炎は、通常の間質性肺炎よりも診断や治療が難しい場合が多いことが知られていますが、最近の研究では、抗リウマチ薬や生物学的製剤などを用いて疾患活動性をしっかりと抑えられている場合には間質性肺炎の発症や進行を抑えられることが報告されています。原疾患の治療をしっかりと行うこと、間質性肺炎が疑われた場合には速やかに呼吸器内科専門医と連携して診断と治療を進めることが重要です。
痛いのは関節なのに、何で呼吸状態や咳の有無を確認するのか、酸素飽和度の測定や胸のレントゲンが必要なのかと思われるかもしれませんが、間質性肺炎の早期発見には欠かせませんのでご理解ください。また、膠原病の患者さんではレントゲンや呼吸機能検査では異常が出ないけれども潜在的に間質性肺炎があるということもあり得ます。そのような場合には新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなど呼吸器感染症への罹患が急性増悪のきっかけとなり、救命が難しい状況になることも少なくありません。日頃から感染予防に努め、呼吸困難や酸素飽和度の低下などが生じた場合にはすぐに主治医にご相談下さい。
酸素飽和度は指をパルスオキシメーターという機械で挟むだけで簡単に測定できます。既にお持ちの方も多いと思いますが、まだの方はご家庭でも測定できるように購入されることをお勧めします。
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院長ヴォイス2024.05.09