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不明熱と自己炎症症候群について

 新型コロナウイルスが蔓延して以降、熱が出れば真っ先に新型コロナウイルス感染症を考える状況が続いていますが、熱が出る病気は他にもたくさんあります。原因が分からないけれども熱が出るという状況を「不明熱」と言います。不明熱の原因として多い疾患3つ(感染症、悪性腫瘍、膠原病)をまとめて3大不明熱と呼びます。感染症では、細菌やウイルス、寄生虫など何らかの病原微生物に感染することで熱が出ます。悪性腫瘍(癌や白血病、悪性リンパ腫など)で熱が出ることは比較的多く、40%以上の方が「腫瘍熱」と呼ばれる悪性腫瘍が原因の熱を経験します。膠原病と言うと、関節リウマチを一番に思い浮かべる方が多く、あまり熱が出る印象がない方もいらっしゃるかと思いますが、リウマチ性疾患に分類される疾患は100種類以上あり、中には40℃近い熱が続くような疾患もあります。それら3大不明熱に加えて、最近、4つ目の不明熱として、「自己炎症症候群」が注目されています。
 
 自己炎症性症候群は1999年に提唱された疾患で、全身性の炎症を繰り返す病気です。現在も毎年のように新しい自己炎症症候群が報告される状況で、まだ病態の解明が進んでいません。多くの場合、発熱があり、関節・皮膚・腸・眼・骨など様々な場所の炎症を伴います。症状が感染症や膠原病に似ていますが、病原微生物や自己抗体は検出されません。遺伝子変異を調べなければ診断がつきませんので、症状や経過、家族歴などから疑い、遺伝子診断ガイドライン・フローチャートに照らして判断していくしかありません。新しい検査が開発されることで、これまでは診断がつかず「不明熱」と考えられていた病態に病名がつき、治療方法が模索されるようになってきています。
 
 自己炎症症候群の中で最も患者さんが多いのは、家族性地中海熱(FMF)です。FMFは名前の通り、地中海地方に多いのですが、意外と日本にもFMFの家系があり、当院を受診される方もいらっしゃいます。遺伝子の検査を行い、確定診断がつけば、9割以上の方で著効するコルヒチンを投与します。コルヒチンは一般的には痛風の薬と認識されていますので、FMFを疑わなければ、用いられることはありません。まずは、疑うことが重要です。その他の多くの自己炎症症候群では、炎症性サイトカインを抑える抗サイトカイン療法が試みられることが増えています。関節リウマチの治療にも使っているJAK阻害薬が治療薬の候補になっている病気もありますが、まだ有効な治療方法がみつかっていない疾患も多くあります。多くの自己炎症症候群は診断が可能になったものの、治療法が確立されるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

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